










<こちらの作品の楽曲はダウンロードとなります>
能の謡曲の中の聴きどころを抜き出したものを小謡というそうです。
作家の工房にある様々な気配や物音の一部を小謡として世に出す。
自らも作り手として活動している雄大さんだからこその発想と、そして実際にこの小謡は不思議なほど繰り返し聴きたくなる魅力を持っています。
工房で産まれる音と、作家の気配。
hanauta 雄大さん、真由子さんたち音楽家の楽器の音。
差異があるけれど確かに共存している六つの小謡たち。
これらを住まいや仕事場で聴くわたしたち。
音楽を通して知らない世界の存在をはっきりと感じることができます。
「アトリエの小謡、というタイトルをすごく気に入っているんです」という雄大さんの静かな横顔が印象的でした。
雄大さんはこの作品を仕上げるにあたって、ガラス・木材・金属・陶土・石を通して手を動かし続ける作家の工房にじっと身を置き、観察し、そこに流れる音や気配やもの、素材と一体になることを試みたそう。
作る人が作るものに込める様々なことと、雄大さんが音楽を作ったり演奏することに通じると感じたとおっしゃいました。
そして人類学者の石倉敏明さんともたくさんお話をされたのだそうです。
石倉さんから教えてもらったと、工芸や人類学に関する本もいくつか読まれたとのこと。
hanauta の活動の中で出会った作家たちや石倉さんとのやりとりもこの作品の中に溶け込んでいるのだと感じます。
___
工房の中で、作家は手と心臓と知覚器官を一つにしてモノに触れ、世界と共に鼓動を深めてゆく。ガラス、木材、陶土、金属、石といった素材を通って、そこに何が現れるのかを予測しつつ、意識と物質の流れはゆるやかに絡まり合う。呼吸と心拍のリズムは微かに響いている。鈴木雄大の音楽はそのプロセスに限りなく近づき、クラフトへの愛と敬意を持って革新的なアンビエントの次元を醸成した。ここにあるのは制作者の夢、うたへの希望である。
石倉敏明(人類学者)
___
下記、制作者の鈴木雄大さんご自身からの言葉もあります。
こちらはぜひ、ぜひお目通しくださいますようお願いいたします。
Yudai Suzuki 2nd album
「アトリエの小謡 」
アートワーク6枚入り楽曲ダウンロードカード+真鍮クリップ
(価格:2000円+tax)
design:Little A / hanauta
mix & mastering:大城真
produce:hanauta
thanks to 松田明徳、民芸パパヤー、千葉尚志
1)「hanakage」(2020年録音)
glass:境田亜希
piano & fluegelhorn:鈴木雄大
flute:石川真由子
drum:tko from omu-tone
炉の放つ熱気と吹き竿と踊るような
繰り返す所作を重ねて聴いてみると
律動が浮かんできた
重力を伝えたガラスが投影する今日の光
2)「推進力」(2018年録音)
wood:長門あゆみ
fluegelhorn:鈴木雄大
flute:石川真由子
drone:Woodblue
record cutting:OVO
講義棟の渡り廊下を船廠にして杉木を彫る
レコードの溝にも似た成長輪は
呼吸の揺らぎを記録している
旋回も漂流もしながら舟は進む
3)「カタツムリノプップー」(2020年録音)
metal:安東桂
trumpet & shrutibox:鈴木雄大
buzzing:ichiro
素材との絶え間ない対話が物語を伴う
誰かのために自分のために 労作歌があればいい
新見南吉「デンデンムシノカナシミ」に寄せて
4)「new eclecticism」(2017年録音)
porcelain & 轆轤ドローン:田村一
trumpet & synthesizer:鈴木雄大
flute:石川真由子
drum:tko from omu-tone
mpc:Woodblue
轆轤ドローンとは
ギターの持続音を轆轤の回転に同期させたもの
粘土の手応えに随って混じる気配
練り上げる即興セッション
5)「Re-flection」(2017年録音)
stone:有馬寛子
trumpet:鈴木雄大
mpc & drone:Woodblue
静謐な佇まいからは予想外だった制作現場を経て
大理石の持つその温度と湿度
漣の痕のざらつきに触れる
展示空間に響いていた曲をRemix
6)「prayer」(2019年録音)
glass:熊谷峻
trumpet:鈴木雄大
guitar & voice:大垣涼太
鋳造するガラスのように
砕いて溶けた音が対流する
日々の重なりが生む歌は
澄んだものを手許に湛える
【アルバム制作にあたり】
前作1stアルバムは、自身の活動拠点である”studio”の空気感をパッケージすることをコンセプトとして、1枚1枚手作りのジャケットを受注生産するCDのかたちで2020年3月に発表しました。手作りの要素が多かったのは、ものづくりをしている友人たちへの憧憬からでもあります。
自らの作品を手を動かし続けて届けていくものとしたことが、社会の大きな変化の中でも文字通り手を止めることをさせず、思考を循環させるきっかけになり救いになったようにも思えます。ものをつくることについて改めて考えたこの機会に、以前から続けていた〔ものづくりの制作過程に出る音と曲をつくるプロジェクト〕をアルバムとして形に残すことにしました。
2017年から偶発的に始まったこの活動。まず、アトリエに響く音に純粋に惹きつけられました。繰り返し聴き続けていると、やがて素材・道具・作家の息づかいを感じるようになり、それは音楽家(楽器)との境界をより曖昧にしました。そこにある全てのものが発する声紋、その躍動にただ目を凝らし耳を傾け、こうして溢れ出る言葉のようなものを一節すくい上げるようにして「うた」としました。
作品が纏っているものが谺して浮かび上がる
楽器の放つものが手を離れ地に還る
人の手によって舫い、綻びてリズムは形成する
今作に対するこのイメージに前作から通底しているものは、私にとっての”studio”がそうであるようにアトリエもまた、うたが生まれて還る場所であるということ。
つくることで呼吸し、循環が躍動を生む、このアルバムに収めたのはその一端です。 耳をひらいて、遠近にある美しさを聴き逃さぬように。
2021年10月 鈴木雄大
<送料無料>